5つのラ・カンパネラ

2017/05/08
5つのラ・カンパネラ
雑学 楽曲

超絶技巧ピアノ曲の変遷



「僕はピアノのパガニーニになる!」
失恋による傷心の日々の最中に触れた、パガニーニの超絶技巧のヴァイオリン演奏。
感銘を受けたリストは進むべき道をパガニーニのその激しく動きく弓の先に見つけます。

聴かせるだけでなく、魅せるまでをも技術としたリストは、その自身の理想を凝縮させた作品を完成させます。
『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』です。
読んで字の如く、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の第3楽章『ラ・カンパネラ』の主題を用いた作品になります。
この作品を基として、リストは改訂を続けることになりますが、この作品が第1版となります。

そして初めの改訂を加えた第2版が『パガニーニによる超絶技巧練習曲集』の第3番です。
『パガ超』という通り名を持っており、この世で一番難しいピアノ曲というお題目に必ずエントリーしてくる作品です。
第1版に比べて作品は短くなっているものの、20世紀最高のピアニストと謳われたウラディミール・ホロヴィッツをもってしても、「演奏不可能。」と言わしめる程の難易度でした。

第3版と第4版については現在では演奏機会がほとんどないのですが、『パガニーニの「ラ・カンパネラ」と「ヴェニスの謝肉祭」の主題による大幻想曲』と、そのさらなる改訂版になる『パガニーニの主題による大幻想曲』です。
リストにしか弾けない作品と言われていた第1版、第2版と違って難易度は少し易しくなったのですが、その裏にはある2つの進化がありました。
演奏効果が高くなり、早い鍵盤の連打にも耐えられるようになったピアノの進化と、技術で魅せるだけでなく作品としての構成や重なり合う音の美しさに開眼していったリストの進化です。

そんな進化の結晶ともいうべき作品が、現代で最も演奏機会の多い最終版、『パガニーニによる大練習曲』の第3番です。
『パガ超』に対して『パガ大』なんて言われ方もしますね。
この作品では前述したピアノの進化を証明するかのように、同音での早い連打が登場します。
第1版が作曲された頃のピアノでは音が繋がってしまい、構想は出来ても演奏は出来なかった同音の連打を、この第5版が作曲された時のピアノが演奏可能としたことで、作品の幅が広がったということですね。
さらにはリストも演奏家から作曲家へとシフトの重きを移していた時代ですので、スケールの大きいクライマックスなど、魅せるからより聴かせる曲へと進化を遂げています。

世界一の難易度と言われる超絶技巧の『パガ超』から、響きや構成の美しさも手に入れた『パガ大』を聴けばその変化の過程がよく分かるかと思います。



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