門外不出の秘曲

2017/03/13
門外不出の秘曲
雑学 楽曲

ミゼレーレ



グレゴリオ・アレグリによって作曲された『ミゼレーレ』は、旧約聖書の詩篇を基にした作品で、当時はバチカンのシスティーナ礼拝堂にて復活祭の前の週に3日間だけ歌われる曲でした。
演奏される機会が少ないだけでなく、その楽譜は持ち出すことはもちろん写譜することも禁じられ、この禁を破ったものは破門されるというまさに門外不出の秘曲です。
それでも何とかこの秘曲を盗み出そうと何人もの人が挑戦しましたが、その美しさを外の世界で再現することはできませんでした。

しかし、今日の私たちはこの作品を聴くこともできますし、楽譜を手に入れることもできます。
一体どこでこの秘曲が固い門をこじ開けて世界に飛び立っていったのでしょう。

その媒体となったのは神童モーツァルトでした。
レオポルトと世界中を旅して回っていたモーツァルトはローマを訪れた際に、水曜礼拝でこの『ミゼレーレ』と出会います。
宿に戻るやいなや記憶を頼りに『ミゼレーレ』を楽譜に書き写していくと、金曜日に再度礼拝堂を訪れて細かい修正を加えて楽譜を完成させてしまいます。

あの秘曲の楽譜が手元にあること、さらにはそれを自身の息子がいとも簡単にやってのけてしまったことに大興奮したレオポルトは、勢いそのままに喜びの手紙をしたためています。
息子モーツァルトの才能をまたも再確認するような出来事でした。

旅の途中で出会った英国人の歴史家のバーニーがモーツァルトから楽譜を手に入れると、ロンドンに楽譜を持ち帰り、とうとう秘曲『ミゼレーレ』が出版されます。
このモーツァルトが記憶を頼りに書き写した『ミゼレーレ』の完成度の高さは凄まじく、これまでの挑戦者たちとは違い、その美を完全に再現するものでした。

これには時のローマ教皇もお手上げで、禁令は撤廃されモーツァルトはローマへ呼ばれます。
モーツァルトもどのような罰が下るのだろうと考えたかもしれませんが、ローマ教皇は一度聴いただけで『ミゼレーレ』を暗譜し、長年誰も成し得なかった『ミゼレーレ』の持ち出しを成功させた少年モーツァルトを大絶賛します。

このひとりの天才少年のおかげで、我々はこの美しい作品を何の苦労もなく聴けるようになったのです。
禁を破れば破門にしてしまう程に厳重にこの秘曲を隠してきましたが、モーツァルトの才能はその想定をはるかに超えるものだったということでしょうね。

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