パガニーニとベルリオーズ

2016/11/13
パガニーニとベルリオーズ
雑学 楽曲

イタリアのハロルド



悪魔と契約した演奏家?』と『ベルリオーズの幻想交響曲に秘められた殺人計画』で紹介したパガニーニベルリオーズ
一見接点のなさそうな2人の作曲家ですが、2人の間には意外な糸が隠されていました。

ベルリオーズは自身の回想録を出版しているのですが、最初の接点としてそこにパガニーニとの逸話が登場します。
ヴァイオリンのヴィルトゥオーソとして知られるパガニーニですが、ある日ストラディバリウスの素晴らしいヴィオラを手に入れます。

この名器を活かすに相応しいヴィオラの作品がなかった為、感銘を受けた『幻想交響曲』を作曲したベルリオーズにヴィオラがメインの作品の作曲を依頼します。
有名なパガニーニからの依頼を喜んで引き受けたベルリオーズは、早速作曲に着手します。

ある日、作品の進捗状況を確認しに来たパガニーニベルリオーズの進んでいる方向性が自身の思惑と違うことに気が付きます。
難解なフレーズのヴィオラ独奏が前面に出てくる作品を期待していたパガニーニに対し、ベルリオーズの作品はヴィオラが主役ではあるものの、あくまでも作品の求めに応じてヴィオラが出てくる形式であり、ヴィオラが休みの小節もある程でした。

パガニーニの期待に完全に応えることは難しいと感じたベルリオーズは、「あなたが満足いくような曲はあなたにしか書けない」と言い、作曲を辞退します。
そして途中まで出来上がっていた作品を、独奏ヴィオラをともなった交響曲『イタリアのハロルド』として発表します。

この『ハロルド』というのは、イギリスの詩人バイロンの『チャイルド・ハロルドの遍歴』という詩から標題を取った、ベルリオーズお得意の標題交響曲です。
さらにはローマ大賞を受賞して、イタリアに留学していた時分の自身の体験も色濃く反映されていると言われています。

『イタリアのハロルド』初演の4年後、この作品を聴いたパガニーニは手放しで賞賛し、「ベートーヴェンの後継者はベルリオーズをおいて他にありません。」とまで言ってのけます。
さらには教会に寄付をすることを拒否し、慈善演奏会には出演しないなどケチで有名だったパガニーニが、ベルリオーズに2万フランもの大金を送ります。
感激したベルリオーズは劇的交響曲『ロメオとジュリエット』を作曲しパガニーニに献呈するなど、ふたりの関係はこれ以上ない程の蜜月関係に見えます。

この逸話は冒頭の通り、ベルリオーズの回想録に基づいた話なのですが、今日ではその信憑性は疑問視されています。
ベルリオーズによる脚色があったり、記憶違いなどが見つかったからです。

またケチで有名なパガニーニが2万フランもの大金を援助したことについても色々な説があり、ベルリオーズの作品を出版していた人物が、ベルリオーズが大物であるパガニーニから大金を援助してもらったとなれば一気にその名が売れるだろうと目論み、2万フランをパガニーニ渡してパガニーニ名義で援助をしてもらったなどとも言われています。

ただ作曲の経緯に関しての真偽の程は別としても、『イタリアのハロルド』は『幻想交響曲』にも負けず劣らずの名作として現在にも聴き継がれています。

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