ワルツ王の誕生

2016/08/20
ワルツ王の誕生
人物 雑学

ヨハン・シュトラウス2世



ウィーン発、世界で大人気だったワルツ作曲家ヨハン・シュトラウス1世の長男で、その父の実績に比肩する、いや凌駕する業績を残したのがヨハン・シュトラウス2世です。

王の名を息子に奪われた父』でヨハン・シュトラウス1世と友人でありながら、後に対立し競合関係となっていったヨーゼフ・ランナーとのエピソードを紹介しましたが、その中のひとつに結婚にあたって賃上げを要求したところ断られたというものがありました。
ヨハン・シュトラウス1世はいわゆる"でき婚"をしており、この賃上げ交渉時に結婚相手のお腹にいたのが後のワルツ王であるヨハン・シュトラウス2世です。

世界的なワルツ作曲家である父のもとに生まれてきたヨハン・シュトラウス2世は、水が高きより低きに流れるように音楽家の道を志します。
しかし音楽家が浮き草稼業であることを身にしみて痛感していたヨハン・シュトラウス1世は息子が音楽の道へと進むのに反対します。
いや反対どころかほとんど妨害に近い形で、楽器に触れることすら許しませんでした。

唯一、教養の為と演奏を許されたピアノを熱心に弾き続けた結果、その有り余る才能が開花し、若干8歳にしてピアノの弟子を取るに至ります。
しかし父に許可されたピアノだけでは満足できません。
父のようにヴァイオリンが弾きたい、そう願っていたヨハン・シュトラウス2世はピアノのレッスンで貯めたお金で父に内緒でヴァイオリンを購入し、その練習に勤しみました。
しかし夢のような時間はそう長くは続きませんでした。
練習をしている所を父に見つかると、やっとの思いで購入したヴァイオリンを叩き壊されてしまいます。

ヨハン・シュトラウス1世は自分の思い通りにならないと気がすまない所があり、自身の楽団でも逆らう楽団員に暴力をふるったり、果ては解雇にするということもありました。
それは家庭内でも同様で、傍若無人に振舞った挙句に愛人を作って家庭を顧みることもなくなりました。

当然、妻はヨハン・シュトラウス1世を恨みます。
そして復讐の凶器として選ばれたのがヨハン・シュトラウス2世でした。
叩き壊されたヴァイオリンの代わりに新しいヴァイオリンをヨハン・シュトラウス2世に買い与えると、息子の音楽への道を全身全霊で応援します。
息子を夫よりも優秀な音楽家に育てることが彼女の復讐だったのです。
パーマーの楽団から独立するために必要に迫られて独学で音楽を学んだヨハン・シュトラウス1世に対し、ヨハン・シュトラウス2世はこのような事情から音楽家に師事し、音楽理論を学ぶことができました。

そして音楽修行を経ていよいよデビューコンサートの幕が上がります。
ある意味妻から夫への復讐の幕が開いた瞬間とも言えるかもしれません。

デビューコンサートで大喝采を浴びると、「おやすみランナー、こんばんはシュトラウス1世、おはようシュトラウス2世!」という有名な言葉が生まれます。
ヨハン・シュトラウス1世は自身の地位を利用して、息子が演奏できないように主要な会場に働きかけますが、ヨハン・シュトラウス2世も父の手が届かない場所で演奏活動を続けその名声を高めていきます。
そしてランナーに次いで、父子による第2のワルツ合戦が始まると、妻は夫へ離縁状を叩きつけます。
復讐の完遂というところでしょうか。

しかし当の父子は初めの頃こそシェアの奪い合いでしのぎを削っていましたが、後に和解して協力するようになったようです。

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