天から音を連れてきた父

2016/07/25
天から音を連れてきた父
人物 雑学

レオポルト・モーツァルト



ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを天才という言葉で形容するのであれば、その父レオポルトは秀才と形容される人物です。
いやその実、性格は真反対とも言えるほどで、ヴォルフガングはご存知の通りの放蕩ぶりでしたが、レオポルトは反面堅物でした。

対比をしていくとあまりに真反対でおもしろいのですが、まずは青年時代を比べてみましょう。
製本師の父のもとに生まれたレオポルトは、長男であることもあり職人の道を継ぐはずでしたが、学に秀でたものがあったため最終的には哲学と法律を学ぶために大学へ入学します。
しかし音楽に傾倒していった結果、除籍となりそこから音楽への道を歩き始めました。
一方のヴォルフガングは神童の呼び名をヨーロッパ中に轟かせ、幼少の頃から宮廷での演奏会で高い評価を得るなど完全に音楽界のサラブレッドでした。

次に職業を比べてみましょう。
共に音楽家という意味では同じですが、レオポルトがザルツブルク宮廷の宮廷副楽長としてその職を全うした反面、ヴォルフガングは晩年まで宮廷に雇われることなく、作曲依頼に応じたり演奏会を開くことで収入を得ていました。
レオポルトは自身が届かなかった宮廷楽長という地位をヴォルフガングに射止めて欲しいと願っていたようですが、親の心子知らずというよりも、知りながらのらりくらりとかわしていたという感じですね。

次に女性関係。
素晴らしい美貌を持ち、才能に溢れた女性を見るとすぐに熱を上げてしまうヴォルフガングは、自身の作品に出演したオペラ歌手やピアノを教えていた生徒などと次々と浮名を流していました。
一方のレオポルトは女性に対してもまじめで一本槍だったようで、浮ついたヴォルフガングをたしなめる手紙を数多く送っています。
  
次に金銭関係。
モーツァルトは実は高収入だった?』でも触れましたが、ヴォルフガングには多額の借金がありました。
一方の父は宮廷副楽長という雇われの身であったことも関係しているのかもしれませんが、借金とは距離を置いた生活を送っていたようです。

最後は少し微妙なところもありますが信仰に関してです。
敬虔なカトリック信者であったレオポルト
その父の影響を受けたヴォルフガングも父の手にあるうちはカトリック信者でしたが、ウィーン移住後はフリーメイソンに加入し、以降はその活動に勤しむようになります。
しかし、レオポルトも晩年にはヴォルフガングの熱心な勧誘を受けてフリーメイソンに加入しています。

天才でありながら、いや天才であったが故に奔放で権力に従うことを嫌い、心のままに生きてきたヴォルフガング
そして口やかましい父という後世の評もありますが、何よりも自身の息子の才能をいち早く見抜き、その息子の才能を開花させるために自分の全てを投げ打ったレオポルト
対照的に見える父子ですが、これ以上ないベストパートナーのようにも見えます。

もちろん父子間でやり取りされる感情はポジティブなものばかりではなく、むしろネガティブなものが多かったのかもしれません。
自身の全てを注ぎ込んでいるのにまったく言うことを聞かない息子に対しての憤りと、自分のやることなすことのいちいちに口を挟んでくる父に対しての憤りがぶつかりあったことは想像に難くはありませんが、それすらもこの天才作曲家の完成には必要なピースだったように思われます。

何より父の言うことを一事が万事聞く子であったなら、それはその程度の才能なんだということかもしれませんね。

関連記事

2016/12/01
お菓子の精の音色
雑学
楽器

2016/12/10
お菓子のバレエ組曲
雑学
楽曲

2016/10/22
ドビュッシーと日本
雑学
楽曲

2016/06/16
バッハとヘンデルの失明に関わった眼科医
雑学

人気の記事
1位. 平均律と純正律の響きの違い

2位. 木管楽器と金管楽器の違いとは?

3位. 不協和音の定義とは?

4位. ブラームス派 VS ワーグナー派

5位. 魔王の作曲者はシューベルトではない?

6位. ベートーヴェンの難聴の原因

7位. エリーゼのためにのエリーゼって誰?

8位. モーツァルトは下品なのか?

9位. ワーグナーの婚礼の合唱は縁起が悪い?

10位. バラードとは?

11位. エリック・サティという突然変異

12位. 非業の死を遂げた作曲家

13位. ハレルヤコーラスでは起立するべき?

14位. チャイコフスキーの突然死の謎

15位. モーツァルトのレクイエムに眠る逸話

16位. メンデルスゾーンの功績

17位. 交響詩とは?

18位. ベートーヴェンに追い詰められた甥

19位. ソナタ形式とは?

20位. リストの娘とワーグナー