不協和音の定義とは?

2016/07/14
不協和音の定義とは?
知識 入門

音程



絵画において影を以って光を描くということがありますが、影と光の境界線は非常に曖昧模糊としているものです。
どこまでが影でどこからが光か、言えることは言えますが何かそれが絶対的だとは言い切れない混ざりあった境界というものが存在します。

音楽における不協和音と協和音もまさにそのような関係にあります。
ドの1オクターブ高いドはドではない?』という記事で協和音が心地よく感じる理由は自然界に存在する倍音によるものだというお話をしました。
そして基音、例えばドを基音とするならばその周波数の倍の周波数が1オクターブ高いドとなり、現在主流の調律法である平均律というのはこの1オクターブを均等な周波数比で分割したものを言います。
実際に鳴っている倍音の周波数と平均律での周波数では若干の誤差がありますが、ここでは無視しましょう。

不協和音を考えるにあたって、最低でも2つ以上の音が鳴っていないと話が始まりませんよね。
例えば2つの音が同時になっているとして、この音と音の高さの隔たりのことを音程と呼びます。
同時に鳴っていなくてもひとつ目の音とふたつ目の音を次々に弾いた場合に、この音と音の隔たりのことも音程と言います。
調性音楽を旋法から学ぶ』でも簡単に音程について触れていますが、簡単に言ってしまえばドとソの音が同時に鳴っているとき、このドとソの距離が音程です。

東京から大阪までは約600キロメートル程の距離があります。
いきなり話が変わりましたが、このキロメートルという単位があるおかげで大体の距離感というのがイメージできますよね。
音程でもこのキロメートルにあたる単位があって、それを度と言います。

また基音をドで考えましょう。
音程の距離は基音からいくつ音が積み上がったかで測ります。
ドからレの距離はドレと2つ積み上がるので2度、ドからミは3度、ドからファは4度、ドからソは5度、ドからラは6度、ドからシは7度、ドからオクターブ上のドは8度になります。
8度以上についてはxオクターブ+y度というように考えます。
計算をすることはないとは思いますが、8度以上の音程をzとして公式化すると"z=7x+y"という式が成り立ちます。
例えば9度であれば1オクターブと2度となりますよね。

ここまではシンプルな話ですが、勘の良い方はお分かりの通り、これだけでは半音と全音の区別がつきません。
例えばドからレの距離は2度ですが、ミからファの距離も2度ですよね。
ただドからレの距離の間にはド#があるのにミからファの間には何もありません。
音程は距離を表しているのに同じ2度では矛盾が生じてしまいます。

そこで3つの新しい概念が表れます。
それぞれ完全、長短、増減という考え方です。

まずは完全音程を見ていきましょう。
完全音程に含まれるのは1度、4度、5度、8度です。
1度は同音、8度はオクターブですが、それぞれ完全1度、完全8度となります。
ドを基音とすると4度はファで半音5つ分、5度はソで半音7つ分となり、この音程がそれぞれ完全4度、完全5度となります。
もちろん基音が変わっても音程の距離が変わらなければ、それは完全音程です。

次に長音程と短音程。
長音程と短音程は2度、3度、6度、7度に現れます。
先程の例で出したドからレの音程とミからファの音程の違いですが、ドからレは半音2つ分の隔たりがあり、ミからファは半音1つ分です。
端的に言ってしまえば、隔たりが大きい方が長音程、隔たりが小さい方が短音程となります。
つまりドからレの音程は長音程となり、長音程の2度なので長2度と呼ばれます。
ミからファの音程は短音程の2度なので短2度です。
同様にして半音4つ分の3度が長3度、半音3つ分の3度が短3度、半音9つ分の6度が長6度で半音8つ分の6度が短6度、半音11個分の7度が長7度で半音10個分の7度が短7度となります。

最後に増音程と減音程。
増減は長短と似たような言葉ですが、完全音程もしくは長音程よりさらに半音分隔たりが大きくなったものが増音程、完全音程もしくは短音程より半音分隔たりが小さくなったものを減音程と呼びます。
ではドからド#の音程は何と呼ばれるのでしょうか。
半音1つ分と考えると短2度かなと思ってしまいますが、初めの定義を思い出してみましょう。
度というのは音がいくつ積み上がっているかで考えると書きましたが、ドからド#では音はドの1つしか積み上がっていません。
よってドからド#は完全1度から半音分隔たりが大きくなったと考えるので増1度となります。
次にレからファ♭の音程を考えてみましょう。
レからファまでの間に3つ音が積み上がっているのでまずは3度ということが分かります。
半音3つ分の隔たりがあれば短3度ですが、レからファ♭の間には半音2つ分しか隔たりがありませんので、短3度から半音隔たりが小さくなった減3度となります。

前置きが長くなってしまいましたが、この音程のルールを知った上でいよいよ不協和音の定義を考えてみましょう。

和音



真に協和音というものを考える時には音の周波数まで考える必要があります。
同時に鳴っている音の周波数比が単純な整数比に近いほど、美しい響きと言われる和音になります。

平均律という調律法が天下を取るまでは純正律という和音の響きに重点を置いた調律法が主流でした。
しかし転調が難しいという欠点を抱えており、現在では転調が容易な平均律という調律法が主流となっています。
前項でも触れましたが、平均律での協和音は周波数の比を見ると単純な整数比とはなっていませんが、ここでは音程の差による響きの差のみに焦点を当てたいと思います。

ではドミソの和音を音程を基に考えて見ましょう。
ドを基音として長3度のミ、完全5度のソという構成でミからソは短3度になっています。
これは問題なく協和音と考えていいでしょう。

ここにレの音を足してドレミソの和音を弾いてみましょう。
おそらく多くの人が不協和音だと言うであろう何とも言えない響きになります。
先ほどの和音と比べるとドからレとレからミの長2度の響きとレからソの完全4度の響きが加わっています。
つまりこのどちらかの音程が悪さをしているということになりますよね。
犯人探しの為に加わった音程以外の要素を全て排除して音の響きを聞いてみましょう。
まずはドとレ、そしてレとミの長2度の響き。
とてもきれいに響いているとは言えません。
次にレとソの完全4度の響き。
これは問題なく調和した響きと言えるでしょう。
つまりドレミソの和音がきれいに響かなかったのは長2度の響きが犯人だったことが分かりました。
このようにきれいに響く音程を協和音程、そうでない響きの音程を不協和音程と呼びます。
不協和音というのは不協和音程を含む響きと定義できますね。

ではどの響きが不協和音程になるのかというのを見ていきますが、まずは協和音程から見ていきましょう。
協和音程といわれる音程は完全1度と完全8度(絶対協和音程)、完全4度と完全5度(完全協和音程)、長短3度と長短6度(不完全協和音程)になります。
不協和音程はこれ以外の音程、つまり長短2度と長短7度、増音程と減音程になります。
ドミソの和音は長短3度と完全5度の響きですので協和音と定義できますし、ドレミソの和音は長2度を含む不協和音と定義できます。

不協和音はダメなのか



ここまでの話の流れで不協和音=悪者というように思われたかもしれません。
しかし不協和音と定義される和音にも味があって素晴らしい響きと言えるものもあるのです。

先程の例に出したドレミソの和音のレを1オクターブ高いレにしてドミソレの和音にしてみましょう。
ドからレは1オクターブと長2度、ミからレは短7度、ソからレは完全5度なので長2度と短7度という2つの不協和音程が含まれています。
しかし響きを聞くと何かノスタルジックで、とてもいい響きなのです。
ちなみにこの和音をCadd9と言います。
ドミソというCのコードに長9度の音を加えているのでこう呼ばれます。

またレを1オクターブ上げないドレミソの和音はきれいな響きとは言えないかもしれませんが、その響きを作品が必要とした場合には大正解の響きになります。
つまり不協和音というのはあくまで不協和音程を含む和音と定義されているだけで、美しい響きもあれば、作品に強烈なインパクトを与えることも出来るのです。

クラシック音楽に触れる上で響きを気にして聴いてみると、より違った作品の楽しみ方ができますのでおすすめです。

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