暇乞いのために作曲された交響曲

2016/07/07
暇乞いのために作曲された交響曲
雑学 楽曲

交響曲第45番『告別』



ハイドンの交響曲第45番は通称『告別』と呼ばれている交響曲です。
告別の意味は読んで字の如し別れを告げるということですが、その意が転じて暇乞いをするという意味でも使われます。
では一体ハイドンは誰に暇乞いを出したかったのでしょうか。

以前の記事『交響曲の父』でハイドンの生涯を簡単に書いていますが、ハイドンはなかなかの苦労人でした。
職人の子供として生まれていますから、モーツァルトの様に幼少から英才教育を受けることも出来ずに聖歌隊として長年働くこととなります。
声変わりでその聖歌隊も解雇されると、フリーの音楽家として10年以上学びの日々を送ります。

フリーとして苦労しながら作曲を続けた結果、音楽家としての名声が高まってきたハイドンにやっと職業音楽家としての口が見つかります。
それがエステルハージ家の楽長というポジションでした。
楽団員を多数抱えることになりますから、楽団員をまとめながら同時に当主の希望も聞かなければならないという、いわば中間管理職のような仕事です。

このエステルハージ家の当主ですが、夏になるとハンガリーにある離宮、エステルハーザで過ごすのが大のお気に入りでした。
当然ハイドンをはじめとする楽団員も家族ともどもこの離宮に赴任することとなります。

ある年の夏、恒例の離宮での滞在中のことです。
当主が急遽、離宮での滞在を2ヶ月延長すると言い出しました。
元々の滞在を含めればかなりの長期に渡って家を不在にすることになりますので、楽団員の家族だけは家に帰ることになりました。

離宮での滞在は当主にとっては息抜きになっても、楽団員からすれば家にも帰れないし仕事の連続でかなりストレスが溜まることです。
さらに家族まで引き離されてしまい、いよいよ不満が爆発寸前まで膨れ上がることとなりました。

ここで大変なのは中間管理職、ハイドンです。
上からは無理を命じられ、下からはどうなっているんだと突き上げられ、まったくもって今の中間管理職と同じ構図が見えてきます。
そして直接当主に訴えかけようものなら、苦労してやっとつかんだこの楽長というポジションを失うかもしれません。

そこで一計を案じたハイドンが作曲した曲がこの交響曲第45番、通称『告別』です。
4楽章の通常の交響曲の構成で、第3楽章までは普通に進んでいくのですが、第4楽章後半のアダージョに入ると演奏者がろうそくの火を吹き消してはひとりひとり退場していき、最後はヴァイオリン奏者ふたりしか残らないという何とも意味ありげな曲です。

これを見た当主はさすがに事の次第を推し量り、初演翌日にはめでたく離宮での滞在に終わりを告げたようです。

部下の要望を作品にして上司に分からせるとは、ハイドンは中間管理職としても優秀な人物だったようですね。

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