調性音楽へのアンチテーゼ

2016/06/14
調性音楽へのアンチテーゼ
知識 入門

十二音技法



先日の投稿『移調の限られた旋法とは?』で調性音楽から脱却する為の方法論として、新しい旋法を作り出すという手法を紹介させて頂きました。
今回はもうひとつの手法である十二音技法を紹介したいと思います。

またここで簡単に調性音楽というものを定義しておくと、響きの美しい和音を和声のルールに沿って繋げていった音楽とでも言いましょうか。
つまり無調への挑戦というのは、いかにこの耳馴染みの良い響きや音の繋がりを感じさせないかという点に鍵があります。
そして、その解法として提示されたのが今回紹介する十二音技法になります。

この十二音技法を編み出したのはアルノルト・シェーンベルクというウィーンの作曲家で、無調への挑戦の方法論として十二音技法に至りました。
ではいったい十二音技法とはどのような作曲法なのでしょうか?

ドを基準として、そこから順に半音ずつ上がっていくと、1オクターブ上のドまでの間に12個の音を見つけることができます(ピアノなどで確認してみて下さい)。
そしてこの12個の音を重複がないように並べ替えて、ひとつの音列を作ります。
並べ替えのパターンは12の階乗通り、つまり5億通り弱ありますので、その中からどのような音列を作り出すのかが作曲家の大きな腕の見せ所になります。

そしてこの音列を基本型として、様々なバリエーションを施していくことで作品としての個性を確立させていきます。

バリエーション



まずはリズム。
この基本型の音列にリズムを加えることで、一気に作曲家の思想が乗ることになります。
また音列の隣り合う音を同時に鳴らすこともできるので(間隔が0のリズムという解釈です)、本末転倒となりそうですがここで和声的な要素を加えることもできます。

次にこの音列を変化させてバリエーションを加えるパターンです。
まずは移高。
これは移調と同じことですが、無調を謳っている以上、調という言葉は使えないので高さを変える移高という言葉を使用します。
音列の音程の関係を崩さずに半音上げたり下げたりするということですね。

そして逆行、反行、逆反行。
逆行は読んで字の如く、音列を逆からトレースしていくことです。
反行は音列の中のどこかの音を基準として横に線を引き、その線を軸として線対称の音列を作ることを反行と言います。
逆反行はこの反行形を逆行したものを言います。

他にもバリエーションについては作曲家によって色々な手法がありますので、同じ十二音技法を用いた作品でも個性は様々に出てきます。
例えばシェーンベルクの弟子で以前の記事『非業の死を遂げた作曲家』で紹介したヴェーベルンは、音列をさらに複数のグループに分けて、そのグループごとにバリエーションルールを用いるなどシェーンベルクよりも緻密な作品を残しています。

十二音技法に魅せられた作曲家はこのフォーマットに、調性からの脱却や全く新しい作曲手法の確立、自身の哲学の体現など、その新しい機能美に可能性を感じていたことは間違いありません。
厳密に言うと調性がないと言われている音楽でも絶対的に和声の解釈から逃れることはできず、どこかで和声の香りを漂わせることにはなるのですが、長い期間当たり前だった調性音楽というものを新しいフォーマットによって変革しようとする試みは、時代を変える人間が常に持つマインドセットのように思います。

現代の音楽もこのマインドセットを持った誰かによって変革される日が近いかもしれませんね。

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