移調の限られた旋法とは?

2016/06/13
移調の限られた旋法とは?
知識 入門

既存の価値観の破壊



以前の投稿の『調性音楽を旋法から学ぶ』で、7つの旋法と調性音楽について紹介しました。
旋法というのはありていに言うと、半音と全音の組み合わせのパターンでしたね。
長調、短調以外の旋法については長らく調性音楽という枠組みでは捉えられていませんでしたが、終止音によって解決されるという意味で調性音楽になり、またこれらの旋法は終止音がド、ド#、レ、レ#、ミ、ファ、ファ#、ソ、ソ#、ラ、ラ#、シの12のパターンに移調することが可能となります。

綿々と進化という糸を紡いでいった調性音楽ですが、デファクトとなった価値観があればひっくり返してやろうというのが芸術家という生き物のようです。
紡がれた糸をほどき、自分なりの価値観を創造するものが現れました。

クラシック音楽史上でその最初の一筆を振るったのがリストです。
1885年、『無調のバガテル』で調性からの脱却にチャレンジしています。
調性から脱却する為の方法は、例えばピアノをハンマーで叩きまくるみたいなものをなしとすれば、まったく新しい旋法を作り出すか十二音技法という方法を取るかのどちらかになります。

『無調のバガテル』はこの内の前者、新しい旋法を作り出すという方法論で作曲された作品で、半音と全音の組み合わせを半音、全音、半音、全音、半音、全音、半音、全音という旋法にしました。
以前に紹介した7つの旋法は12通りに移調できたものが、この旋法では終止音を変えても重複するものが出てくる為、3通りにしか移調することができません。
つまり"移調が限られた旋法"ということになります。

リストの時代にはこの新しい旋法に対して体系だてられた理論がありませんでしたが(そもそもこの作品自体が長年闇に埋もれていた作品で、発見されたのが1956年です)、後にオリヴィエ・メシアンという作曲家がこれらの移調が限られた旋法を体系立ててまとめました。
『無調のバガテル』は"移調が限られた旋法"の中では第2番として定義されています。

このように既存の価値観をひっくり返そうという芸術家が多数現れた結果、現代の音楽が今の形式を取っていると言っても過言ではないかもしれません。

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