20年の歳月をかけて作曲された交響曲

2016/04/11
20年の歳月をかけて作曲された交響曲
雑学

ブラームスとベートーヴェン



バッハベートヴェンと並び『三大B』と評される大作曲家であるブラームスですが、当時のロマン派作曲家たちのご多分に漏れず、ベートーヴェンを崇拝していました。

音楽に限らないことではありますが、影響から作品への昇華については様々なパターンがあると思います。
影響に対してそのインスピレーションを基にまったく新しいものを創造しようとする者、影響に対してそのフォーマットはそのままにそこに自分らしさを注ぎ込む者。
前者の形態を取った者を時代はロマン派と名付けましたが、ブラームスは後者に類する作曲家でありました。
故にロマン派という括りではなく、新古典派と呼ばれたりもします。

この新古典派のブラームスですが、非常に自己批判精神の強い人間であったようです。
自己肯定と自己批判の幅が創造の幅などと言われたりもしますが、ブラームスのそれは少し行き過ぎていたきらいがありまして、作曲をしても後から聴いて気に入らないと破棄してしまうといった有様でした。

そんなブラームスが交響曲を作曲するとなると大変です。
シューマンの影響で交響曲の作曲を思い立ったと言われていますが、崇拝するベートヴェンは9つの偉大なる交響曲を残しています。
多くのロマン派の作曲家は交響曲という形式を古いものと捉え、オペラや歌曲に移行していっている時期ですから、交響曲となると聴衆は少なからずベートーヴェンを意識することとなります。
自己批判精神の強いブラームスが、崇拝するベートヴェンの影を意識しながら作曲を進めていく。

その結果が20年という歳月でした。

ブラームス自身、ベートーヴェンからの影響や敬意というものをまったく隠し立てすることなく、第1楽章と第3楽章にはベートーヴェンの第5番『運命』と同じ音型が用いられていますし、第4楽章ではベートーヴェンの第9番の主題である『歓喜の歌』と似た旋律が登場します。
そのような推敲を重ねた結果、『リストの娘とワーグナー』で取り上げましたビューローから「これはベートーヴェンの交響曲第10番だ」と、ブラームスにとってこれ以上にない評価を受けるに至りました(ちなみにバッハベートーヴェンブラームスをもって『三大B』と評したのもこのビューローです)。

世界初のレコーディング



1877年にエジソンが蓄音機を発明してから12年後、エジソンの代理人からブラームスに録音の依頼が来ます。
録音場所は旧知の間柄であるフェリンガー家。
元々エジソンの発明に関心を持っていたブラームスは録音を快諾し、セッションの為に『ラプソディ作品79-2』という作品を準備していました。

しかしこの曲の練習中に元来の自己批判的精神が顔をもたげます。
自身のテクニックが衰えていることを悟ったブラームスは、後世に自身の演奏が残るのを苦慮するようになりました。

その思いが発露したのでしょうか、録音の当日、エンジニアの準備が整っていないにも関わらず「今からフェリンガー夫人が演奏します!」と叫ぶやいなやピアノ演奏を始めてしまいます。
しかしもちろん弾いているのはブラームスですから、エンジニアは慌てて「演奏はブラームス博士によるものです!」とアナウンスし急遽録音を開始します。
結果、ブラームスはラプソディを弾かずに自身が編曲した『ハンガリア舞曲第一番』と演奏が容易なシュトラウスの『とんぼ』を演奏しました。

今日でもその時に録音された演奏が残されています(かなりノイズは入っていますが)。

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