シューマンの指

2016/03/29
シューマンの指
雑学 人物

指の故障の原因



シューマンは古典派からロマン派への橋渡しをした、クラシック音楽史上で重要なポジションを占める作曲家です。
当初はピアニストを目指し、順調にピアニストとしての階段を昇っていったシューマンですが、ある日右手の指を痛めてしまいます。

ピアニストを目指しているシューマンはあの手この手を使って指の治療を行おうとします。
薬草の湿布を貼ったり、死んだばかりの動物の体内に右手をいれ、その血に指を浸したりなどかなり怪しい治療も行っていたようです。
しかし一向に回復の兆しは見えず、シューマンはピアニストの道を諦め、作曲家への道を進むようになります。

ではシューマンが指を痛めた原因はなんだったのでしょうか。
シューマンの関係者が色々と証言していますのでまとめてみましょう。

まずはシューマン本人の談。
「テクニックの練習をしすぎて、右手がだめになってしまった。」
音楽の世界に限らず、オーバーワークによる故障というのはよくある話ですよね。

シューマンのピアノの師であり、妻クララの父でもあるヴィークの談。
「私の有名な弟子が、私の意に反して指の訓練機を発明し、それを密かに使うことで第3、第4指を痛めてしまった。」
ポイントはシューマンとは、はっきり言及していない所です。

シューマンの娘、オイゲーニエの談。
「父親が第3指を縛ってつり上げ、他の指で鍵盤を弾いていた。」
指を痛めたという話は出てきませんが、ヴィークの談を証明するかのような話です。

シューマンの妻、クララの談
「固い無音鍵盤で練習したのが原因で、右手の第2指を故障してしまった。」
ヴィークの談とは痛めた指が違いますね。
しかし長年連れ添い、シューマンが生涯愛した妻の談ですから信憑性は高そうです。

シューマンが軍隊に志願した際の軍司令官の談
「右第3指の完全麻痺と右第2指の部分麻痺があり、軍隊には不適格である。」
クララの談と痛めた指の箇所は一致しています。
何より軍隊の証明書ですから信頼性は高いですね。

後年の音楽学者エリック・サムスの仮説
「梅毒の治療としてシューマンに集中的に施された水銀の毒性のせいである。」
つまり、シューマンは指の訓練機により指を痛めたのではなく、水銀中毒によって指の麻痺を招いたということです。

以上をまとめると、シューマンが指の訓練機を使用していたのは間違いなさそうですが、それが直接的にピアニストを諦めなければならないほどの故障に繋がったかについては論考の余地がありそうです。
当時の医学では治療に水銀を使用することはごくごく一般的なことであり、水銀の毒性は広く認識されていない時代ですから、シューマンの指の故障の原因に目に見える理由を言うのは当然のことと言えます。
それがオーバーワークであったり指の訓練機であったり固い無音鍵盤であったりするわけです。
もちろん水銀の毒性による麻痺というのもあくまでも仮説にすぎず、その本当の答えは永遠に分からないかもしれません。
しかし結果的にピアニストの道を諦めたことでロマン派を代表する作曲家になったという一面もあると思いますので、運命のいたずらというのは分からないものですね。

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