シューベルトの幻の交響曲の正体を暴く

2016/03/23
シューベルトの幻の交響曲の正体を暴く
雑学 楽曲

シューベルトの短い生涯



教区の教師でアマチュアの音楽家を父に持つシューベルトは、幼い頃に父からヴァイオリンの手ほどきを受けると、みるみるうちにその才覚を現し始めます。

決して裕福ではなかったシューベルト家ですが、シューベルトの持つ音楽的才能を周りが放っておかなかった為に、聖歌隊のピアノを使わせてもらったり、五線譜を買ってもらったりと音楽的素養を伸ばすのに困ることはありませんでした。
この傾向は彼が大人になっても変わることはなく、初めは父の学校で嫌々教師の仕事をするも、友人の勧めでその友人宅の客人となると、食事も作曲を行うのに必要なものも全て友人たちが用意してくれました。

こうして作曲に集中できる環境があったからこそ、シューベルトは31年という決して長くはない人生の中で、多くの作品を残すことができたのです。

生前、シューベルトの作品はなかなか出版に漕ぎつけることができませんでしたが、作品を発表する中で一定の名声を確立した後はそこそこ売れる作曲家になっていたようです。
しかし、金銭的なものに無頓着だったシューベルトはその売上のほとんどを出版社に取られてしまい、自身の手元にはいつも雀の涙ほどの金額しか残されていませんでした。

シューベルトは腸チフスだとか梅毒の感染、またはその治療の為の水銀中毒により若くしてその命を落としたとされていますが、その葬儀の際にシューベルトの遺産では一番安い葬儀でも執り行うことができなかったそうです。

ただただその魂のすべてを作曲に捧げていた、ある意味で本当の音楽家と言えるかもしれませんね。
その中でも歌曲の作曲は600曲以上にも及び、歌曲の王として今日でも知られています。

幻の交響曲とは?



そんな歌曲の王として知られるシューベルトですが、優れた交響曲も残しています。

有名なものでいうと、第二楽章で終わってしまっている、通称『未完成交響曲』。
通常交響曲は四つの楽章から成るのが一般的ですが、この交響曲は第三楽章のスケッチは残されているものの、完成しているのは第二楽章までとなっており、その理由として諸説述べられています。
シューベルトが第二楽章までで完成された作品だと判断し、それ以上は蛇足となると考えたという説。
常日頃から作品を完成させることなく手放してしまうという傾向があった為、この作品もそのひとつだという説など様々です。

しかしいずれにせよ、この第二楽章までの『未完成交響曲』は、今日でも最も演奏される交響曲のひとつとして優れた作品であるということは疑いもない事実です。

そんな交響曲にも定評のあるシューベルトですが、完成している最後の交響曲して知られる曲に『ザ・グレート』があります。

この曲はシューベルトの死後10年後にシューマンが、シューベルトが死去した場所であるシューベルトの兄の家を訪ねた際に発見したものです。
シューベルトの兄はシューベルトの書斎を、死後手をつけることなくそのままにしておきました。
その部屋を訪ねたシューマンがほこりに埋もれた『ザ・グレート』を発見したのです(さらに30年後、この部屋から多くの作品が発見されます)。

この『ザ・グレート』はメンデルスゾーンに送られ、メンデルスゾーンの指揮によって大喝采を浴びることとなります。

さて、では標題の幻の交響曲とは一体何でしょう。

これはシューベルトの手紙の中だけでその存在を謳われた交響曲で、通称『グムンデン・ガシュタイン交響曲』と呼ばれます。
1825年に作曲されたと手紙では残されているのですが、当時シューベルトが作曲した交響曲に1825年のものはありませんでした。

しかし研究が進み、前述の『ザ・グレート』の直筆譜に書かれた1828年という作曲年が何者かに書き換えられた数字であり、実際は1825年に作曲されたことが判明します。
これにより幻の交響曲『グムンデン・ガシュタイン交響曲』は『ザ・グレート』のことだと推論され、万事解決かと思われました。

しかし、話はここでは終わりません。

何と『グムンデン・ガシュタイン交響曲』と思われる筆写譜がシュツットガルトで発見されるのです。
この発見された筆写譜が、主題がまったく『ザ・グレート』と同じであった為、現在では『グムンデン・ガシュタイン交響曲』は『ザ・グレート』の下書きとして書かれた交響曲という認識が一般的になりました。

まさにクラシック音楽のミステリー、大どんでん返しというやつですね。

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